「……何してる」

突如後ろから聞こえる問いに反射的に振り返った。

暗闇からかすかに見える位置にいる人影。

その位置から動かない所を見ると、警戒心が強いのか。

「……誰?」

「ここから先はお前が来るような所じゃない。さっさと立ち去れ」

質問に答えず、有無を言わせないオーラで淡々といい放った。

肌をピリピリと突き刺すような視線にかなり警戒してる様子が伝わる。

「道に迷った挙げ句、足を挫いたの」

ここで人に出会ったのは奇跡としか言えない。

仕方なく事実を伝えると、戸惑ったように影が動いた。

「…見せてみろ」

ゆっくりとした動きで明るい場所へと足を踏み入れてきた人に目をやる。

月明かりに照らされた姿は影と変わらず、全てが真っ黒に覆われていた。

辛うじて肌が見えるのは鼻から上のみ。口元も布で隠れており表情全てを読み取ることができない状態だ。

「見せてみろ」

もう一度告げると私の足元に座り込み、恐る恐る私の足に触れ、捻ったところを確認した。