幸福の花 ~夏~

「百合はまた山登るのか?俺んちも今年は登るんだけど」

「うん、明日」

答えながら表情が曇るのが自分でも解った。

私の顔を見ながら悠太は不思議そうに

「嫌なのか?」と聞いた。

「え、別に、毎年だし、山登り疲れるし、ね…」

適当にごまかす。

誰にも『呪い』のことを知られたくなかった。

「ふーん。で、山登ったら帰っちゃうわけ?」

「いや、あと3日くらいはいるよ」

「やった。今、百合のとこ以外に誰もこなくてさ。またどっかで遊ぼうぜ」

「うん。いいよ、暇だし」

「暇つぶしかよ!」

クロユリは嫌だけど、悠太がいてくれてよかった。