幸福の花 ~夏~

駅の改札から溢れる人ごみに目をこらして、リョウタを探す。

「あのやろう、見つかんないわ」

「なんだよ、あのやろうって」

リョウタは私の真後ろに立っていた。

慌てて振り返った私は、なんと声をかけていいのかわからなかった。


「ただいま。美佐子」

「…おかえり、リョウタ」


結局、ただの挨拶をかわす。

『会いたかった』だのなんだの、ラブラブカップルみたいな台詞は私達には似合わない。

だからこれでいいんだ。


「じゃあ、家行こうか」

「おう。あれ?美佐子、ちょっと太った?」

「余計なことは言わなくてよろしい」

地味に気にしていることをさらりと言ってしまう彼氏に、呆れながら歩き出した。