幸福の花 ~夏~

「横井くん、野沢さんに告られたらしいよー」

「え?」

蓮が転入して一年ほどたった高三の初夏、唐突に友人はそんな噂を運んできた。

野沢さんは、学年いちの美少女だった。

同じクラスになったことはないので性格などは知らないが、たしかに誰もが認める可愛らしさがあった。

たしか今、蓮と野沢さんは同じクラス。

蓮、やっぱりもてるんだ。

チクリと胸がいたんだが、覚悟していたことだ。

そう思いながら、なにとなしに、

「美男美女カップル誕生だね」

と茶化した。

ところが、返って来たのは予想外の言葉だった。

「それがね、横井くん…ふっちゃったの」