幸福の花 ~夏~

「ー、ねぇ、望ってば!」

「!」

友人の声で現実に引き戻される。

「もう帰りのホームルーム終わったよ」

「え、うそ」

確かに教室には私と友人の二人きりだった。

蓮もいない。

「ほら、早く帰ろ」

「あ、うん」

友人の言葉に、椅子から立ち上がる。

「もう、今日の望なんか変。帰り際に横井君に話しかけられても、ぜんぜん気づいてなかったし」

「ええ!私、話しかけられてたの?!」

「そうだよ、まったくぅ…」

私は蓮の席を見つめながら教室を出た。