とっさに声がでなかった。

「待って」と言いたかったのに。

心の迷いが私にそうさせてくれなかった。

「バカだな、私」

声が出せたのは蓮とその友人達が自転車にまたがり、遠ざかってからだった。

泣きそうなのを我慢して家に帰って、宿題のために筆箱を出そうと習字用の手提げを探った。

ガサ。

漢字練習用のノートとも、下敷きとも違う感触がした。

なんだろう、と触ったものを引っ張りだした。

それは、見覚えのない小さな紙袋だった。

反射的に紙袋を開ける。

「え…」

中に入っていたのは…