しかし、蓮は私には全く気づいていないのか無反応だった。

結局蓮はその日の授業が終わるまで、私に一言も話しかけなかった。

私は忘れられてるのかな。

少し悲しくなって、私から話しかけることもできなかった。

仕方なく私は帰りの準備のためにスクールバッグに教科書を入れ始めた。

「あ」

蓮が声を発した。

何事かと蓮のほうを見ると、蓮の視線は私のスクールバッグに注がれている。

「どうしたの?」

「いや…何でもない」

「ふーん」

私はなんとなく自分のスクールバッグを眺めた。

紺の布地。

灰色の持ち手。

高校の校章。

そして、小さなクマのぬいぐるみ。

(あ…)

このクマ、蓮がくれたんだった。