私、黒木 百合はカレンダーを見てため息をついた。

「またこの季節か…」

この時期になると祖母の家の近くの山に、クロユリが咲き乱れる。

それはそれは美しい光景…なのだが。

我が家はその花を見るために、わざわざ県を越え、祖母の家に世話になり、山に登る。

それも毎年。

もう何度も行っているのだから、感動も薄れ、山に登ることは憂鬱になっていた。

それに、クロユリは嫌いだ。

「あ…」

そうだ。

そういえば私の誕生日ももうすぐだ。