痛みは感じない。


あれ?私死んだの?

もう天国に来ちゃったの??


だけど、ここにいる実感はある。

思わず、自分の腹を撫で回す。


どこも……刺されていない?


じゃあ、さっきの音は…………?


私は、恐る恐る目を開けた。


「お、父さん………!?」


目の前には、ナイフのせいで穴が開いてしまった浮き輪の体をした、お父さん。

フシューという音と同時に、空気が抜けていってる。


「め、い………」

「お父さん、大丈夫!?」

「な、ん……と………か」


お父さんが、私を庇ったんだ!

だから、お父さんが卓に刺されてしまって……。

ああ、何て事だ。


これじゃあ、10年前と一緒じゃないか。


また、私がお父さんを殺したのと同じようなものではないか。