ファーストキスは浮き輪でした。

お父さんは、私を連れて、学校に行った。

職員室はどこだ、とお父さんに言われて、私はお父さんを職員室に案内した。

職員室に入るなり、お父さんは、今にも私の担任の先生を殴りそうになったが、

どうどう、と暴れまわる馬をなだめるように、教頭先生がお父さんをなだめて、

担任、校長、教頭、父、私で、校長室で話し合う事になった。


校長室に入るのは、二回目だった。

初めて入ったときは、小学一年生の時で、学校案内みたいな感じで、色んな部屋を回って、そこで校長室に来たのだ。

あの時は、ほんの一瞬しか校長室にいられなかったが、その時は三時間程、校長室にいた。


お父さんは、担任を怒鳴りつけた。

担任は、終始黙っていた。

校長先生と教頭先生は、ずっとぺこぺこと謝っていた。


それから一週間ほど後の事だった。

担任の先生が、変わった。


新しい担任の先生は、給食を残す事にあまりうるさくなく、

「ゆっくりでいいから、食べられるようになろうね」と言っていた。

私は、担任の先生が変わった事が、とても嬉しかった。


家に帰ると、私はその事をお父さんに報告した。

お父さんは「良かったね」と、私に笑顔を向け、

面白いギャグを言ったりして、私を笑わせてくれた。


それが、私がお父さんと過ごした最後の時間だった。