「…棗を好きだと思うのは、もう終わりにしたいんだ。自分勝手だよな、ごめん。
これ以上棗と一緒にいたら、もっと好きになると思う。…好きになりたくない。
だから、言いたかった」
海が鳴く。砂が舞い上がる。
空は遠く、海はどこまでも暗い。
涙が、溢れる。止まらない。
もう、すべて吐き出してしまえ。
この恋心を、一滴も残らず。
「爽さん、好きですっ……」
夏闇の中。
爽さんの腕に抱き締められた。
ぬくもりが、体温が、強まる風に奪われる。
どこかにさらってくれたら。
知らなくてよかった。
爽さんの罪も、あたしへの想いも、爽さんを好きだと想う気持ちも、川西爽路という存在も。
知らない方がよかったのに。
『俺のこと好きになんなよー』
本当だ。爽さんの言う通りだ。
あなたは、好きになってはいけない人だった。
こんなに苦しい恋を、ずっと忘れられる気がしない。
胸が張り裂けそうで、痛い。
「大好きです」
この腕が離されるとき、あたしの恋は終わるのだろう。
静かに、確かに。
今はただ、時が止まれと、願うことしかできない。
fin

