爽さんが、あたしを…好き?
一度だって考えてみたことなどなかった。ありえないと思っていた。信じられない。
「…でも」
しかし、爽さんは続ける。
夏夜の間際は、いつも現実感を薄れさせる。
「汐莉も好きなんだ」
知ってますよ。
爽さんは汐莉さんが好き。
汐莉さんが爽さんが好き。
それはとっても当たり前。
あたしを好きなことの方が、信じられない。
変に冷静な頭の奥は、鼓動の速まりとともりくるくると回転している。
「……」
しかし、頭と反して、驚きで声は出てこない。
ぬるい夜風が耳を撫でる。
「ごめん、いきなりこんなこと言って。でも聞いてほしいんだ」
いつもと違う爽さん。真剣な表情。
あたしは頷いて俯いて、足元の砂を数えている。

