「いらっしゃいませ。」
深く頭を下げながら、初音の前にあるテーブルにお茶を置いて行く。
「ごゆっくり。」
部屋を出る際にもう一度深く頭を下げる。
その丁寧さに初音も恐縮して同じように頭を下げた。
「あの人は…。」
「あの人は、もう40年近くもこの屋敷の家政婦をしているともえさん。この屋敷には、5人の家政婦がいるんだ。」
「へぇ~。」
さすが、大企業西大寺グループ。
私のような凡人には一生縁のない世界だわ。
「まぁ、せっかくだからどうぞ。」
勧められるがままにテーブルに置かれた和菓子を一口食べて気持ちを落ち着かせる。
博人は和菓子を頬張る初音の隣に座って横からジッと見つめている。
「ちょ、ちょっと、あまり見ないでよ。食べにくいじゃない。」
「初音さんは、いつ見ても可愛いね。」
耳元で囁かれる。
ダメダメ。
いつもこうやって博人君に惑わされる。
今日は、どうしても聞きたい事があるのに。
初音は何度か瞬きした後、少し俯きながら話し始めた。

