「森山さんどうぞ。」

看護婦に呼ばれ、英美は誠人をおろし手を引いて診察室に向かう。



コンコン―――



「どうぞ。」

いつものように優しい高野先生の言葉が、英美の耳を通過していく。

「失礼します。」

扉を開き、軽く頭を下げ足を踏み入れる。

「しちゅれいしましゅ。」

英美の真似をする誠人。

同じように頭を下げ中に入った。

「今日はご主人さまはいらっしゃらないんですね。」

弘樹の姿がないことに気付いた高野先生が言葉を発した。