「陽塚由紀。おれと付き合え」

「はっ?意味わかんないでしょ。いきなり何告ってんの?」

「いいからおれと付き合えよ」

「あんたバカじゃない?唐突にも程があるでしょ?」

「何言ってんだよ?おれ、かっこいいだろ?付き合ってくれよ?」

「離して!!」
大きな声が辺りに広がる。さすがにこっちを見て笑っていたグループも笑い声を抑えた。



「何怒ってんだよ?」

「どうしてそれがわからないの?バカじゃないの?」

「な…何だよ。意味わかんねぇのはそっちじゃねぇか」

「あんたは…あんたは顔が良いだけじゃない?そんなので女と必ず付き合えると思ってんの?ほんとバカだよ。もういいから離して。あんたみたいなヤツが一番嫌いなの」
もうその彼女の腕を掴むだけの力は出なかった。
ただ、意味もわからずに時間が過ぎた。

さっきまで感じていた視線はもうどこかへいった。
代わりに味わった事のない感じが心から湧いた。