「どうして辞めたの?」
バスケ部に入って二ヶ月。そして辞めた次の日。登校中。

わかっていながら直は質問してきた。

「何って。陽塚由紀が何にもアクション起こさないから」

「それだけ?」

「そーだ。他に理由でもあるか?」

「ちょっと周りを振り回しすぎじゃない?」

「そーか?」

「けっこー期待してたんでしょ?梗君に?だから部活なんて辞めときなって言ったのに」

「まぁ、辞めちまったもんはしょうがねぇ」

それ以上会話は続かなかった。


教室に入るなり喋りかけられた。
話し掛けられたい人に。

「あんた辞めたの?」

「お?初めてじゃね?話し掛けてくれるの」

「辞めたのって?訊いてんの」

「そーだけど」

「どうして?」

「お前がどうとも言わないから」

「私のせいなの?意味わかんない。折角、やっている時はかっこいいと思ったけど、バカらしい。やっぱあんた嫌い」

言いたい事だけ言われた気がする。そのまま自分の席に戻って待っていた二人と話し始めた。

「梗君…」

「あ、雨だ」

六月の半ば。梅雨。そんな言葉をニュースの最後に聞く。
雨粒が落ちてくるのを見て改めて実感する。

誰とも喋りたくなかった。
と、いうかどうでもよくなってきた。
どうしておれが一人の女に振り回されているんだ?

学校中におれが陽塚由紀の事を好きな噂が広まって、告白されるどころか連絡先も聞かれなくなった。

一体何がしたいんだ?今、何をしているんだ?

いつも通り。それでよかったんじゃねぇか。テキトーに女つくって、遊んで、別れて。またつくって。
そんないつも通りで楽しかったんじゃねぇのか?

「直…今日の昼休み。ちょい付き合ってくれ」

「ん?いいよ」

直は理由を聞かないでくれた。
本当にいいヤツだ。