五時間目。おれの視線はチラチラ向くほうに向いていたが、目が合う事はなかった。
休み時間になればすぐに教室を出て行き、喋る時間もなかった。
結局、休み時間の全ては誰も座っていない席を眺めていた。
「今から部活登録用紙を配るぞ。部活動に入るヤツはなくすなよ」
六時間目。LRH。いきなり入って来た担任はそう言ってプリントを配り始めた。
部活。そんなもの必要無い。それがおれの考え。練習や試合があれば、デートも出来ない。だから中学は名ばかりのテニス部だった。
その後のこの時間は、学校生活について云々を先生の一人舞台だった。
「梗君。部活とかやらないよね?」
帰り道。直は唐突にそう訊いてきた。
「あ?あぁ。けど、女って部活やってる男とか好きなんじゃね?」
「何?陽塚さん意識してんだよね?なら、辞めといた方がいいと思うよ。そんな理由で三年間続かないと思うな」
「……いや。やってやる」
「本気?それなら別にとめないけどさ…で、どの部?テニス部?」
「いや、もっとこーモテそうなヤツ」
「今のままでも十分モテてるじゃん…。じゃあ、野球とかバスケとか?」
「坊主はヤだし、バスケ。決定だな」
「いいの?そんな簡単に決めて…ルールとか知らないじゃん」
「や。別に大丈夫。おれ運動神経いいし」
実際、運動神経は良かった。中学もほとんど練習に参加してないながら、最後の大会個人では県大会まで進んだ。
あとは、それを陽塚由紀に報告して、どう思われるか。だ。
直の心配をよそにおれは次の日に仮入部した。