足早の体は屋上へと辿り着いた。
初めて空けた時と同じ感触が体中に巡る。

だけど、おれの求めた姿はどこにもなかった。

そのまま、どこを探していいかわからずに教室に戻った。

直は、こぼれた教科書をセッセと片付けて持ち主に謝っていた。

「あ、梗君」

「わり、直」

「ん?別に慣れっこだよ。梗君の後片付け」

「それで?陽塚さんは見付かったの?って見付かってないよね。こんな早く帰ってきたもんね」

お弁当を食べていた席に戻ると、すぐに訊いてきた。

「あぁ」

食べる気が起きなかった。ただわからないのにキレられてどうすればいいのかわからなかった。
だから、片付けを始めた。

「高野さんと八木さんも捜しに行ったよ。会ってない?」

「さぁ、わかんね。それどころじゃなかったし」

「梗君さぁ。変わったよね。周りが見えなくなるまで夢中になるなんて…」

「お前が言うならそうなんじゃね?」

直は少し笑ってそれきりだった。

話す事もなく、ただ頭で理由を考えていた。
見付からない答えを必死にもがいて探していた。


陽塚由紀と残り二人が帰ってきたのは、五時間目の始まる直前だった。