だけど、今回は違うんだ。あいつの代わりは居ない気がする。
そんな事を思っている。


「まぁとにかく、陽塚さんのタイプに近づけるようにがんばってみれば?」

「そうするか。なら八木さんにメールしとこ」

「それはダメだよ」
携帯を取り出した手を止められる。

「なんで?」

「それがわからなきゃ陽塚さんと付き合えないかもね」

「教えろよ」

「自分で考えたら?」

正直イラッときた。が、直には怒れない。

だけども答えはわからなかった。



だから、直接聞く事にした。

お弁当をほっぽりだして、陽塚由紀のもとへ歩む。

周りに二人も当然居た。

「陽塚由紀…」

二人はおれの声に振り向いてくれたが、当の本人は見もしない。

「お前のタイプってどんなヤツだ?」

「…………」

「おれが訊いてんだ。答えろよ」

「アンタ逆の人。もうどっかいって。嫌いだから」

「なっ…だから、何が気に食わないんだよ!?」

おれの声に教室の時間は止まったように静かになった。何にも動かない。
ただ、少し速いおれの心音だけが胸の内から漏れ出す。

「恥ずかしいでしょ。考えてよ。それに、あんたを嫌いじゃなくても、私は…誰とも付き合わないから」

その言葉を最後に、陽塚由紀は教室を出た。

おれはどうしていいかわからず、横にあった机を思い切り蹴った。
中から教科書がこぼれたが、そんなのは関係ない。体は彼女を追った。