廊下を歩いていた。

全ての視線は一点に向いていた。おれにだった。

別に嬉しくも何ともなかった。いつもの事だった。


街を歩けば逆ナンも少なくはないし、電車に乗ってもよく視線を集める。

そして色んな人とも付き合った。告白する前にされる。それがいつも通りだった。

一線を越えた女もいた。それもいつも通りだった。日常だった。


視線を浴びたまま教室に入り、自分の席へと座った。


そろそろ来る頃かな?

タイミングはドンピシャだった。

「あの…」
一人の女の声が横で聞こえる。
やっぱり来た。

「ん?」
わざとらしく少し驚いた。
そこには二人いた。

「アドレス教えてください」
二つの携帯が目の前に突き出された。

「はいはい。いいよ」
と、赤外線で二人のアドレスを受け取る。

「高野さんに八木さんね。オッケー。覚えたよ。後でメールすんね」

「はい」
二人は火照った顔を冷ましながら、一人の女の子の席へ寄っていった。