誰もいない所で泣きたかったのに、我慢出来ずに涙が溢れ出す。
屋上へ行く階段に座り、声を押し殺して泣いた。
でもなんで泣いてるのか分からない。
だって私は海聖の彼女じゃないし、好きなわけでもない。
泣く理由なんてどこにもないのに。
それなのに涙が止まらない。
すると勢いよく階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきた。
心愛?
きっと心配で追いかけてきたんだ。
早く涙を拭いて、笑顔で答えないと。
重い腰を上げ、立ち上がる。
「…ご、ごめんね心愛!
急に緊張しちゃってさ!もうだいじょ……」
いきなり抱き締められた。
鍛えられた体、力強く私を抱き締める腕。



