「……ん、夢…?」




今日は変な夢を見た。




思い出したくなかったのに。




昨日、海聖におんぶされて優しくされたからだ。




もうこれ以上、海聖とは関わるなって神様が教えてくれたのかもしれない。




でも家を出れば、海聖がいつものように待っていた。




「…おはよう、繭歌。頭痛いのは治った?」




「……うん。昨日はありがとう…」




嫌な夢を見たせいで、曖昧な返事になってしまった。




海聖の顔が見れなくて下を向く。




「…じゃあ、なんで繭歌は元気がないの?」




海聖は俯く私の顔を覗き込んできた。




その優しい微笑みが、優しい声がまたあの言葉を思い出させる。




『繭歌のせいだからね。アンタが海聖くんの傍にいるから、たくさんの女子が傷ついてるんだよ』




そんなの……そんなの……




「…そんなの知らないよ!!!」




私は逃げるようにして、走り出していた。