俺は何も言わず、
うつむいていると、
末永は立ち上がった。



「それだけだ。
明日からちゃんと来いよ」



俺の肩を強めに叩くと
玄関へ向かった。



靴を履く後姿を見ながら、
これだけを言いにここへ来たのか…と思うと、
少し嬉しい気持ちになった。


俺のことを
心配してくれる人もいるんだなって。


末永は父さんより
少し若いぐらいだろう。


もし父さんが居たら、
こんな風に心配してくれるかな…と思ってしまう。



「じゃあな。また明日」


「…あ。はい…」



末永が玄関を出て行く瞬間、
父さんが家を出て行った時の事が
脳裏を過ぎる。