バーのカーテンを開けると、煙草をくわえた健斗の姿が。


「お、リコ」


「また煙草?」


煙草のケースを持ち上げて健斗を見る。



「ははっ、ふかしてるだけだし」


「あっそ」



健斗とは、あたしがこの生活を始めるきっかけになった人でもあり、わたしの唯一の親友。そして…



…おそらく、初恋の人。




「相変わらず冷たいねー」


「健斗にだけね」


「そんなリコも嫌いじゃないけどな」


その言葉、そのまま返すよ。



カーテンをまた開けてマスターの元に戻り、カウンターに置かれたグラスの目の前の席に座る。


「今日は演奏、するのかい?」


「んー、そのつもりです。呼ばれたんで」