「ケンもね。色んな女の人が見てたよ」



そう、ほんとにモテる。人気なんだ。
健斗とはあれから1回も寝てない。けど、どれだけの女の人と体を重ねたんだろう。
あの部屋に何人の女の人を連れたのだろう。

あたしは、健斗と出会ってから何日か健斗の部屋で生活していた。家に帰りたくなくて、
誰か人の温もりを欲しかったから。

…懐かしいな。



って、あたしも言えないか。





「リコちゃん、次お願いできるかい?」


今、演奏が終わったであろうマスターがステージから降りてきた。


「いいですよ!じゃあ…サックスでも弾こうかな」


「いいね!みんなリコちゃんのサックス好きだから」


あたしのことを好きな人なんて…いるんだろうか。


あたしは、嫌われ者でみんなから嫌われ続けて生きていくんだろう。これからもずっと。