マー君2(原作)

「母さん?」

顔を上げると、目の前に女性が立っていた。

薄暗くよく見えないが、声でその人物がよく知る者だとわかった。

「七恵か」

美代のことを言いに来たのか?

七恵はゆっくり近づいてくると、何も言わず隣のブランコに座った。

そのまま黙っているので、仕方なく一樹から重い口を開いた。

「説教しにきたのか?」

「・・・・・・」

七恵は何も言わない。

何かあったのだろうか?

七恵は俯いたままブランコを揺らす。

一樹はしばらくその様子を見つめていた。

すると、七恵がようやく口を開いた。

ゆっくりと。

「一樹・・・・・・一樹はなんであんなこと美代に言ったの?」

やはりか。

一樹は顔を反らし、口ごもる。

「美代が嫌いなの?」

「・・・・・・」

「それとも何か、あったの?」

一樹はぴくりと体を震わせた。

ここで七恵に全て話すべきか?

だが、七恵が感染者の可能性もある。

けど、それを前提として考えれば、何も信じられない。

何も−−。

七恵は一人で話を進める。

さっきからパトカーのサイレンの音がうるさい。

「一樹は一人でなんでも抱えすぎだよ。私もいるんだよ。美代だけじゃあなく」