マー君2(原作)

背後から声をかけられた。

一樹は目を大きく見開き、息を止めた。

その声はよく知るものだ。

母親の声、そのものだ。

一樹は一瞬思考が停止した。

すぐ後ろに母さんがいる。

感染者−−マー君信者がっ!

一樹は通話ボタンを押せなかった。

それは母親が話しかけてきたからだ。

こっちに向かってきながら。

「誰に、電話するつもり? 一樹、してもいいんだよ。したい、なら」

ばれて、るのか?

一樹は必死に思考回路をこじ開け、逃げ道を探した。

その結果出た答えがこれだった。

「い、や、美代に電話しようしたんだけど、その、貸してもらう物があって、それで忘れないように」

後ろを振り向きながらごまかそうとした。

と、振り向いた瞬間、母親の顔が視界に入ってきた。

すぐ目の前にだ!

一樹は思わず声を上げそうになったが、何とか堪えた。

ぎりぎりだった。

歯を食いしばらなければ、声が漏れてしまいそうだ。

一樹はさっきとは一変した冷酷母親を見返した。

すると、母親はにやりと気味の悪い笑みを見せてある提案をしてきた。