マー君2(原作)

「一樹に言うの忘れてたんだけど」

母親が微笑みながら、嬉しそうに話す。

だが、一樹にはその笑みが作られた物にしか見えなかった。

白い仮面。

偽りの顔。

母さんは嘘をついている。

「お父さん最近仕事うまくいっててね、それで−−」

仕事がうまくいってるなら、日々喧嘩をする訳がない。

一樹は毎日聞こえる父親の怒鳴り声を思い起こす。

やはり、母さんは嘘をついている。

本当は−−。

「それでね、お父さんったら、ってどこ行くのよ」

一樹がそそくさに食卓から立ち上がり、リビングから出て行くのを見て、母親が呼びかける。

一樹は構わず玄関に向かう。

「一樹ったら!」

「学校に行ってくる。これ以上遅刻できないから」

言い訳がましいことを言い残し、急いで家を飛び出た。

もう、限界だ!

こんな偽りだらけな家族には。

一樹は家の門から街道に出ると、素早くズボンのポケットから携帯を乱暴に取り出した。

そして−−。

警察に連絡しようと素早く三つの数字を打ち込み、通話ボタンを押そうとした。

指を通話ボタンに−−。

警察に連絡するな。

黒の仮面の警告が聞こえてきた気がしたが、構わなかった。

「これで、これで俺は」

助かる!

この悪夢から解放される。

そう信じ通話ボタンを押そうと、親指を下ろした。

が、その瞬間−−。