マー君2(原作)

が。

次の瞬間−−。

仮面は消えていた。

そこにはいつもの母親の顔があった。

にこやかに笑う顔が。

一樹は大きく見開いた目を下ろし、平静を取り戻そうと口を開いた。

事実なのだ。

昨夜の出来事は。

「母さん?」

「なーに?」

フライパンから目玉焼きをテーブルの上の皿に滑らせながら、母親が応える。

一樹はコップを置き、食パンに噛り付く。

カリッと焼けて香ばしい。

「親父はどうしたの?」

声が震えている気がした。

『どうしたの?』

それはいくつかの意味を含んでいた。

自分で言った一樹も、すぐに後悔した。

緊張のせいで、変な聞き方をしてしまったが、もう取り消せない。

「どうしたの? あ、そうそうお父さんね」

母親が含みのある口調で告げた。

一樹はテーブルの下で拳を握り、身構えた。

次に発せられる言葉に−−。

殺しちゃったの。

そう聞こえてくると思ったが、聞こえてきたのは、他愛もない事柄だった。

「昨日から仕事で海外に出張になったの。だからしばらく・・・・・・帰ってこないの」

何故か語尾が強調されていた。

帰ってこない。

まるで警告のように聞こえた。

帰ってこない・・・・・・。