マー君2(原作)

<38>

目を開けると、夜空が見えた。

どうやらまだ生きているようだ。

我ながらしぶとい。

だが−−。

今度こそは無理のようだ。

一樹は虚ろな瞳で、星の少ない曇った夜空を眺めた。

今日は雲が多いようだ。

せっかく久々に夜空を見上げているというのに。

ザザッ、ザザッ。

一樹の上に大量の土が覆いかぶさる。

一樹は深い穴の中で芋虫のように固まっていた。

手足は固定され、更に口にガムテープ。

八方塞がりだ。

一樹はなすすべなく、降り懸かる土を受け取る。

見えるのは土と穴口から見える夜空だけだ。

いや他にも人の姿が見える。

スコップを持つ二人の警官、そして−−。

穴の縁でこっちを冷たく見下ろす母親の姿。

一樹は重い体を動かすことができなかった。

もうかなりの量の土が体を覆い隠している。

顔にも土がかかる。

それでもどうすることもできない。

頭が痛い。

体が重い。

心が重い。

もう動けなかった。

限界だった。

いくら強がってもしょせん一人だ。

一人じゃあ何もできない。

何も−−。