マー君2(原作)

<37>

目が覚めると、目の前に母親が立っていた。

一樹は状況を把握しようと、体を動かそうとした。

が。

ガチャッ。

手足が固定されている。

見ると手足に手錠が頑丈にかけられている。

「動け、ない」

一樹は椅子に座らせられていた。

両手は後ろに回され、手錠をかけられている。

「目が覚めたかしら、一樹。いえ−−」

エプロン姿の母親がにやりと笑う。

「裏切り者かしら、フフフッ」

母親はキッチン側にあるテーブルに腰掛け、腕を組んでいる。

いつもの母さんとは違う。

まるで別人だ。

一樹は母親を睨みつけた。

明るいリビングに鮮明に映る母親は、おかしそうに笑う。

「一樹、お母さんが憎いの? せっかくお父さん−−」

急に顔を強張らせ、一樹を見下ろす。

「殺してあげたのに。憎かったんでしょ、あいつが。殺したい、ぐらいに」

「・・・・・・いい加減、やめろよ。母さん面するのは?

もう母さんの自我はないんだろ? 心虫に操られてんだろ?

正確にはマー君か」

母親は苦虫を噛んだような顔をしたが、すぐに平静を保った。