EXCAS

「よかった。二人が無事なら、それでいい」
 満ちた笑みを浮かべ、空を見上げた。
 黒い影が火花を散らして、緑の機体が散っていく。
 第三者から見れば互角だが、数の差がありすぎる。
 恨みと憎しみで互角に戦っていても、数の暴力という現実の前に敗北は目に見えた。散っていく火花の中に、水上亮太も紛れるのだろうか。
 赤い翼が粒子を孕む。
 蒼い気流が身体を覆い、風は台風の渦巻き。
 心情を表すかのように、入り乱れ猛々しく、触れる物を打ち砕くと荒れる。
「ごめん、悪いけど……行ってくる」
「お兄ちゃん!?」
「友達がいるんだ。変わってしまったけど、見捨てられない。どこかに隠れていてくれ」
 最後にレナを見た。重なる視線は一度だけ。
 どちらかが悲しそうに、寂しそうに歪み、飛び立った。
 橙色の花火が舞う大空へ。
 真昼に煌めく箒星となり、ショウの姿は見えなくなった。
 その軌跡を眼で追いながら、レナは呟いた。
 低く暗く信じられない、と。

「魔術師……イクシアス」