EXCAS

 白い光が崖を焼く。
 細かな閃光が幾筋も。
 貫かれ砕けた破片はより穿たれ、終いに世界に存在する事を許されないほど。
 何があったと疑う。
 目前の、現実離れした存在を、小さな赤天使を前に。
 赤い四翼が羽ばたく。
 蒼翠は腰ほど伸びた金色の髪から覗き、黒赤の鎧装を纏った天使。

 巨大だった頃とは似つかず、武装のなさは頼りないが。
 存在感はこの場にいる誰よりも。
 空を舞う何よりも雄々しく偉大だった。
「――――大丈夫か」
 落ち着いた、いつもの声だった。
 その容姿、普段の彼とは想像もできない。
 そこにいるのはショウではなく、ショウであった戦う者。
 戦場に身を投じる、単身で立ち向かえる望んだ姿。

 力がほしいと望んだ。
  それは大切な者を守るため。

 力がほしいと望んだ。
  それは決して奪われないため。

 力がほしいと望んだ。
  それは、ただの我侭だから。

 少女は唖然としながら、変わり果てたショウを見つめた。
 けれど瞳は出会った頃と変わらない、何かを心配する優しさを秘めた色。だからこそ、彼と信じて頷いた。
 少女は愕然としながら、変わり果てたショウを見つめた。
 けれど瞳は出会った頃と変わらない、何かを心配する不思議を秘めた色。だからこそ、彼と疑って頷いた。