EXCAS

 トンネルは線を描き続け、天井は崩れ、それだけ。
 敵の姿はなく、弾は切れ、たいしたエネルギーも残らない機体を疾駆させていた。
 汚れた銀色の先に、広がる深い闇。
 夜の闇、宇宙の闇。
 思わず、止める事なく亮太は振り返った。
 この後ろを、誰かが付いてきているんじゃないかと。
 ――――誰も、いない。
 ゼムも、詩絵瑠も、ダージュも、ヴァイフェも、名前も知らない兵士たちも。
 大勢が消えていった、望みもしない苦痛に生きる事を放棄させられ。
 それは、どんなに悲しいのだろう。

「(よけいな事、もう考えるな。さあ、出口だ!)」

 出来る限りの最大加速で、飛び出した。
 黒くて広い、果てしない夜の世界へ。
 そこで、頭上に輝く、明るい、光。
 地獄犬が燃えていた。自らの母艦が、取り返しのつかない状態に陥っていると。秒針が半周しかけ、やっと気づく。

「……艦長! 大尉、メディア大尉!」

 歪な旋回と上昇を繰り返し、そのブリッジに辿り着いた。
 罅割れたガラス、艦橋。
 炎上しているフロア、壁は崩れ天井の下敷きになった乗組員が何人もいる。
 絶望的な、そんな先に。たった一人、穏やかな顔。
 まるで眠っている表情で、メディア・スタッド大尉はそこにいた。

「大尉、大尉! しっかり、しっかりしてください!」