EXCAS

 次第に、予想とは外れた態度を見せ付ける彼にバルザックは苛立った。
 あれだけの滞在、あれだけの惨劇を繰り広げた“モノ”を、未だに抱き続けているのだから。
 あまりの苦しさに方を借りているだけ、なんて考えはこの会話で消し飛んだ。
 そうして確信。これはまだ、ここにいる危険な存在を人間として見ているのだと。
 好意の対象として、愛しさを感じて手放す気はないのだと。

「いつまで、お前は幻想に逃げているのだ」

 腹立たしかった。
 殺意の対象に変わっていった。
 最初から殺す気ではあったものの、あの“夢”を見た時から殺そうとは思っていたものの、これを落とすためには生かしておいたほうがいいだろうと妥協したのに。
 そんな素振りはなく、
 悉く予想外に、
 期待を裏切っていったのだから。

「現実を見ろ!
 そいつは諸悪の根源、すべての元凶!
 悪だ! 悪そのもの! 数多の人間を殺し、今度はお前が食われる番!
 そいつを突き放せ! それが唯一の」


「現実を見るのはお前の方だ。
 バルザック・アザトース」


 冷厳なる声色。
 清涼な響き。
 二色の瞳は、この世の終わりを思わせるほど深い。
 内に眠った魔術式が起動する。瞳から瞳に訴えかけ、その心の内を暴く法が一つ。
 魔術式『心眼(キー・アイズ)』――