EXCAS

「ほら、一緒に帰ろう。仇を討つの、手伝うからさ」

『心にもない事を言うのは、やめたほうがいいよ。言っているでしょう、仇を討つ必要は、なくなっちゃったんだ』

「どうしてそんな事を言うんだよ。それじゃあ、ランサーがかわいそうだろう」

『本当にかわいそうなのは、ショウ君だよ。そして、気づいている。私が、仇を討つ必要がないって、言う理由に』

 有無を言わせない。それは事実を忠実に述べているだけだから。
 藤咲詩絵瑠という少女の心中を、確かに悟っているという事実から。

『わかっているよね? ショウ君が、自分から生きるようになれたから、私は恨む必要がないんだ』

 それは、決して相手を憎いからではなく。むしろ、

『やっと自分から、本当に生きたいって思えるような人になってくれた。私が恨んで、そのために生きていくんだっていう道を、望まなくなった。だから、もういいの』

 それはむしろ、大切な相手に向ける不器用な心遣い。
 大切に思って、それでどうすれば相手のためになるかと思って、紡ぎ出した結果。
 少年は少女に生きてほしかった。そのために己を犠牲にしてでも、死に消えてしまいそうな彼女を救いたかった。
 だが、それは互いに救われていただけの事。
 むしろ、少女のほうが、一枚上手だっただろう。