EXCAS

 同時に、そんな光景を見ながらも決して手を止めない者がいた。
 その蛮行を嘲笑うかのように、黙々と尋常ではない手捌きで。いくつもウインドウが開いては消え、確認のログが出ては一瞥の後消す。プログラム言語の洪水に揉まれながら、けれど勢いは劣る事を知らない。

 異質より異常より、それが何なのかこの場にいる者は理解できなかった。
 徐々に考える事を放棄していく思考では、今まさに起こっている事など直視できない。
 蕩けていく視界、
 茹っていく脳味噌、
 気だるいと訴える四肢、
 永い眠りにつきそうな予感。

 突如として聞こえた、高らかな哄笑を子守唄として。
 その場にいるすべての者は眠りについた。


 永久の、眠りに――――



『「―――――――っ!!!」』



 脳天から爪先まで、すべての神経に痛烈な稲妻が走り抜けた。
 刹那の時に現れたそれは、怖気と吐き気を催す悪意。白い色を汚らしく染める誘い、無色の色を犯すおぞましき安息。このようなものを極楽浄土などとは言わない、間違っても天国などとはいえない。
 そこは地獄。
 天の国を騙った深淵。