EXCAS

 次に気が付いた時は一般的な起床時間。
 右半身の足から腕へ、逆側の手から足へ。順々に動かしていく。
 痛みはそれほど、火傷や喉も治りかけている。魔力で多少サポートしてやれば普段通りの身動きは取れる。
 あくまで普段、それ以上の動きは無理をしなければ出来そうにない。
 眠っているレナを起こさないよう、静かに抜け出す。
 そのままにしておけず毛布を掛けてやる。寝かそうと動かせば気付かれるから。悪いと思いながら、部屋を出た。

 詩絵瑠の部屋は覚えている、一度訪れた事があるから。
 医務室は一つだけ、他に人がいない事から、こんな時間帯だし部屋にいるだろう。

 鋼鉄の扉の前で、少し戸惑った。
 女性の部屋に入る事からの気恥ずかしさじゃなく、どんな顔で会えばいいのかわからない。
 生き残ってしまった俺が、一体どんな顔で話せばいいと。
 悩んでいた自分だが、知らないうちにインターホンを押していた。だが、反応がない。
 よく耳を澄まして、
 どうぞ
 声が聞こえた。