EXCAS

 レナがすぐに駆け寄って支え、ベッドに戻そうとするが、生憎と今は邪魔だった。手を払いのけ、なおも立ち上がろうと悪戦苦闘。

「何しているんですか! とても動ける身体じゃないのに」
「悪、いが、行かないと。行かないところが、ぁる」
「何処に行く気! 大人しく眠っていて。何かするんなら、わたしが代わりにするから」
「ラン、スリットの、恋人へ。俺、が言わないと、な」

 それだけで察してくれたのか、表情は暗く押し留めようと張った手に力はなくなった。
 同時に支える力もなくなったわけで。
 情けなくその場に膝をついてしまう。
 何て無様だ。次の瞬間には身体が再び支えられた。

「貴方が、何を話すのか、わたしにはわからない。でも、せめてもう少し待って。身体が、もう少し回復するまで」
「そんなに、待てない。せめて……歩け、るようになったら、ぃく」
「それで、いいです。だから、今は休んでください。いいですね?」

 ベッドに寝かされ、しっかり見ていますと居座られた。離れてから出て行く、こちらの思惑は読まれたらしい。
 穏やかな微笑を浮かべた顔を見ていると眠くなって来る。相当疲れていたのだろう、無茶が祟った。まどろむ間もなく、意識が切り落とされ眠りに付いた。
 独りで無茶しないで。
 そう、子守唄を歌うような、言葉を聞いた。