EXCAS

 紆余曲折を経て十分後。
 何とか正気を取り戻し、レナと向き合っている自分がいた。

「流石に、死ぬか、と思った。あれ、は」
「ご、ごめんなさい。急に目を醒ましたから、つい」
「つい、で、人をころ、すのか、お前は」
「ほ、本当にごめんなさい! 悪気は、なかったんです、わざとじゃなかったんです」
「当たり、前だ。そんな事で殺、されたくない」
「あはは……やっぱりまだ、本調子じゃなさそう」

 医師が言うには、死んでもおかしくない状態で運ばれてきたと。全身火傷、裂傷骨折も多々、酷いことに墓を注文した方が適切だとか。
 辛うじて息をしていたので、施せる限りの治療をし、結果生き長らえたわけだ。
 しかし、やはり医師が言う。
 何故生きているのか疑問だと。
 推測だが、自分が魔術師だからだろう。
 こうなるまで自覚はなかったが、今は魔力の流れを強く感じる。血管よりも細かく、身体全体に管が通って駆け巡っている。
 身体の治療、無意識下で行われる生存本能。
 こうしてすぐに話せるのも、魔力で喉が回復したためだ。