EXCAS

「……っ、あぁ、ぃっぐゥ」

 同じ失敗を繰り返す。動けば痛む事を頭に記録しておかなければ。だが不可抗力だ。
 記憶を辿れば、あの瞬間を思い出す。
 ならば、どうして静かに眠っていられよう。
 この傷は間違いなくあの時に負わされたものだ。あの悪魔に。
 擦れ違ったその刹那後、長く短い攻防があった。直後、光線を浴びた。
 紅い眼から穿たれた光線を、防ぎようがなくて。

 ……何故生きているんでしょうか。

「――ショウさん?」

 苦痛に顔を歪め、瞳を閉じた。視界を開けた時に景色が変わった。
 目と鼻の先に眠っていた少女がいた。
 見間違えないレナはしかし、見た事がない表情をしていた。

 翡翠の瞳が不自然に歪んでいる。否、正確には潤んでいる。
 どちらにしろ、この距離でそんな表情は見る事がなく初めてだった。