EXCAS

 会話がないと、もう言葉は紡がれないと理解したのか。
 ゆらりと揺らめいて、影が消えかかる。

 ただ一言、

 俺は帰る

 と。そう残して。

「愚か」

 確かな音で、男は言った。
 無音世界に小波の音が鳴る。
 爽やかな、春の風が塩を含んで吹く。

 男は、割れていく世界を、ただ眺めた。

 二度と手は貸すまいと、
 気紛れながらも、今はそう思う。