EXCAS

 しかし、それはとても空しい。
 理解しながら、どうすればいいのかわからず、動き出す事が出来ない。
 慌ただしい周囲は目に入らず、映らない視界ならばと瞳が閉じられた。
 そうして、不思議と浮かんでくる。
 黒い視界は白く染まって、たった一つの人物が、そこにいた。
 今までとは違う、年を取った男性ではない。懐かしさを感じる違う異性、けれど別の意味で懐かしく感じる異性。楽しかったと、そう思わせる異性。

「っく、……」

 目頭が熱く、零れる雫が皮膚に痛い。
 浮かんできた顔の中で、唯一少なかった笑顔が悲しい。
 二度と、それが見られないと認め、


「……認めたく、ない」


 それが空しさの原因。
 今までしてきた事を行う、空しいのだと訴えさせる根底。
 今まで得てきた存在を、思い出の中だけにしたくない。
 生きていると、現実を覆してもらいたい。
 また会える、
 また笑ってくれる、
 またその声が聞ける。
 そう信じて止まない。
 だから行かない。この場を去らない。
 まだ、彼が死んだと認めてないから。
 祈る気持ちで空を見上げる。
 決して曇る事のない空は夜空よりも暗い。
 いつか見せてもらった晴れ晴れとした空が、このどこかにあると信じよう。