EXCAS

「頑張っている。倒せないって、すごく腹立っていて。だけど、無意識に恐怖している。こんなに死が近いんだって、勇ましく、怯えている」
「っ、あいつ、逃げようとしないのか」
「それだけは。絶対に、決意した事は変えないって。意固地になって立ち向かっている。子供みたいだけど、だからこそ期待に応えなくちゃいけないんだ」

 そういう本人が一番出来そうにない。
 無理に笑って、早く下に降りようと言って来る。
 そのか弱い姿に、何か言葉をかけようと手を伸ばし――

 ビクリ、と。
 大きく痙攣して床に伏せた。

 瞳孔は開いて、
 顔は白く、
 唇は赤みを失って石の様。

 そんな少女の姿を、亮太は初めて見てしまう。

「お、おい! どうしたんだよ!?」

 カタカタと震える肢体、氷ほど冷たい頬に驚き。
 けれど、吐き出された言葉には世界がひっくり返る。
 一筋だけ流れた涙は、やがて雨へと変わる。
 梅雨入りに降った夕立、紡がれた言葉に虹はない。




「ショウさんの、意識が、感じられない」




 雨はまだ
 止む気配を見せていない。

 これから、嵐がやって来る――