EXCAS

 悔しくないはずがない。
 腹立たしいと思わないはずがない。
 それでも言うとおり、降伏以外に何ができる。ただひたすらに敵を睨み、
「有難い申し出、なんだろうな。拒否する」
『正気の沙汰とは思えない。もう一度言う、降伏し』
「嫌だって言っている! 死にたくはないが、あんたらと一緒になんかいたくない!」
 素直な感想だった。戦争を起こした敵、亮太の姉を殺した敵、そしてレナを狙って虐殺を繰り広げた。それが許せない。
 降伏する事で大切なモノを失う、それだって許せない。
 そんなものに殺されたくはなく、手放したくないから死にたくもない。
 何というエゴ。だがそれはなんと人間らしい姿だろうか。
 機械であるACEは理解できるわけもない。
 愚かしいと、そうとしか認知しない。

 向けた銃口、指一本で目前の敵を掻き消す事が出来る権利。
 行使するか否か、最後の問いを投げかける。

『最後通告。今すぐ武装解除しなければ発砲する』
 本気だろう。嘘も躊躇いもない、冷たい刃物のような言葉は、
「好きにすればいいさ。俺は、絶対に降伏しない」
 決して譲らない、我侭で子供じみた灼熱の言葉に拒否された。
『――確認した。愚かしい結論だ』