EXCAS

 ACEは警報がなる少し前、ショウが異変を感じ取った次の瞬間には理解していた。
 剣や盾の形成状態。
 翼に集積した粒子の拡散。
 それから推測される全体的な魔力量を計算すると、戦闘開始直前までと大きく減っていた。
 燃料、魔力が切れかけている。
 戦闘続行可能領域の限界が近付いている。
 そう結論を出すまでに時間は一秒だって掛からない。だからこそ作戦を変更した。
 打ち合う事はせず回避に専念、相手の燃料切れを待つ。後は止めを刺すも捕獲するも自由だ。さらに、敵は焦りから動きは滅茶苦茶、予想の通りに展開を運ぶ事に問題はない。
 無様な突進は避け、無謀な斬撃は回避。何度も爆ぜた火花が咲く事はなくなり、振り下ろされる爆風と嘆きに似た慟哭が鳴った。
 ここは戦場、如何に哀れと思っても叶える事はできない。
 如何に同情したとしても、回避する、攻撃に当たらないという事は嘲り以外に他ならない。
 そんな攻撃がいくつ続いただろう。
 ついにショウの動きが止まった。
 持久走を完走したように息は荒く、身体は筋肉痛よりもひどく、生気が欠けている。
 二人は気づかないだろう、魔力は生命力と同質。
 使えば体力は消費され、削り過ぎれば死に至る。
 イクシアスの状態で生命の危機に陥らないよう、無意識にストッパーがかけられた。
 それはいつかショウも気づくだろう。
 今は自分の無力感に打ちひしがれ、敵意を込めて睨む事しかできない。
『降伏する事を勧める。武装を解除せよ』
 もうじき動かなくなるとわかっていて、そう薦めてくる。