「実莉ちゃーん、朝よー、起きてー。」

階段下から母親の声が私の眠りを覚ます。

「……んっ…朝……」

少し瞼を開けるとカーテンの隙間から眩しい太陽が追い打ちをかけ、すぐに瞳を閉じた。

「実莉ちゃん!
遅刻するわよ?」

階段下から聞こえていたはずの声はいつの間にかすぐそこにあって、私はいつものように右手を天井に上げた。

「もう!」

母親の言葉に瞳を閉じたまま私はニコっと笑う。
母親の右手が私の右手を引っ張り、私の身体はやっと起き上がった。

「…お母さん…おはよう。」

「おはよう、今日から高校生でしょ?
早く用意しなさい!
梨華ちゃんと一緒に行くんでしょ?」

「あっ、うん。」

カーテンを開け、眩しい太陽をもう一度確認して、思いっきり息を吸い、よしっと気合いを入れた。

カチっとしたシャツに袖を通し、新しい匂いの制服を身につけると、これから始まる新生活に期待しか持てなくて、心が先走る。
中学生の時とは違うブレザーは私を少しだけ大人に見せた。
スカートのウエスト部分をくるっと一回転させ、高校生らしさをアピールするように少しだけ短くした。