「アンタには……まだ聞きたいことがある」



絶対くる、淡々とした口調だったけど、立ち上がり際に、躊躇うように撫でられた頭に、ユズルさんの優しさが伝わってきて、掴んでいた腕を離してあげることができた。



ユズルさんと入れ替わりに部屋に入ってきたノノちゃんは、私が手にしてるハンカチと、既に姿のないユズルさんの残像らしきものを交互に見やって、


むふふふと


妖怪のような笑い方をしていて、ノノちゃんと一緒に入ってきた先生に、ひどく白い目で見られていことに気づいていなそうだった。



そんな2人の様子が面白くて、


「ミドレミレドレ ソラシドレミ ドラシド」


鼻歌が自然と出てきた。


うん、やっぱり音痴。

悲しいくらい、音痴。