「急いでいるので」 有梨はぎこちなく応じ、足をはやめた。 「あ、ちょっと待ってよ、おねえさん」 媚びを含んだ声は、低い肉食獣の唸り声のそれと変わらない。 狩れそうな獲物に迫った興奮を、どちらも抑えきれていない。 「すげー化粧品があんの。おねえさんに、ガチでピッタリの」 なるほど、と有梨は胸のうちで呟いた。 このハンターが狙っていた獲物は、〈どこか、あか抜けない女〉。 そう。 ちょうど、私のような。