獲物はハンターの目的によって様々だ。



蓮っ葉な雰囲気をまとった女。


陰気な顔をした男。


臆病そうに肩をすくめる中年。


判断力の鈍そうな学生。


そして――




「ねぇ、おねえさん」



有梨は背後からの声にぴくりと耳を動かした。

振り向くまもなく声の主は横に並び、へらりと笑いかけてくる。


スーツをまとった、一見誠実そうな男性。


ふと、有梨の目が男性の左手にとまる。


スーツ下のシャツが、スーツと不釣り合いなほどくたびれている。

そして、そのくたびれたシャツからのぞく派手な時計は、バンドのメッキがところどころが剥げ、金と銀が混ざった奇妙な色になっている。




うわべだけ取りつくろえれば。少しの間だけしのげれば。


そんな考えが透けてみえるようだった。